猪瀬直樹氏は、ノンフィクション作家として日本の政治・行政・戦争を取材してきた一方、道路関係四公団の民営化に関わり、東京都副知事・東京都知事を経て国政へ進んだ政治家です。
2026年10月2日現在は、日本維新の会所属の参議院議員として活動しています。都知事時代の「5000万円」と「かばん」が強く記憶されている一方で、作家としての代表作『昭和16年夏の敗戦』が2026年に映画化されるなど、執筆活動も続いています。
- ノンフィクション作家として『ミカドの肖像』『昭和16年夏の敗戦』などを執筆
- 道路関係四公団民営化推進委員会の委員を経験
- 石原慎太郎都政で東京都副知事となり、2012年に東京都知事へ
- 徳洲会グループ側から5000万円を受け取った問題を受け、2013年に知事を辞任
- 2022年の参院選比例代表で初当選し、国政へ復帰
- 現在は社会保障、医療制度、税制、行政改革などを国会で取り上げている
| 名前 | 猪瀬直樹(いのせ なおき) |
|---|---|
| 生年月日 | 1946年11月20日 |
| 年齢 | 79歳(2026年10月2日時点) |
| 出身地 | 長野県飯山市 |
| 所属 | 日本維新の会 |
| 議員種別 | 参議院議員 |
| 選出 | 比例代表 |
| 当選回数 | 1回 |
| 参院初当選 | 2022年 |
| 任期満了 | 2028年7月25日 |
| 党での役職 | 参議院幹事長 |
| 主な経歴 | 作家、道路関係四公団民営化推進委員、東京都副知事、東京都知事、大阪府・大阪市特別顧問 |
| 学歴 | 信州大学人文学部経済学科卒、明治大学大学院政治経済学研究科政治学専攻博士前期課程修了 |
| 身長 | 参議院・本人公式プロフィールに公表値の記載なし |
| 公式サイト | 猪瀬直樹公式サイト |
| 公式X | @inosenaoki |
猪瀬直樹の現在は?参議院議員として国政で活動
猪瀬直樹氏は現在も現職の国会議員です。 参議院の議員情報では、日本維新の会に所属する比例代表選出の参議院議員・当選1回と記載されています。
2026年9月27日現在、参議院では厚生労働委員会、行政監視委員会、政府開発援助及び国際協力・人道支援等に関する特別委員会に所属しています。任期満了日は2028年7月25日です。
また、本人公式プロフィールでは、2022年の参議院議員就任とともに日本維新の会の参議院幹事長に就任したことが記されています。
現在は「元東京都知事」だけではなく、参議院比例代表の現職議員です。東京都選挙区から選ばれた議員ではありません。
最近は社会保障だけでなく、自動運転など交通・技術政策にも関心を示しています。2026年9月には国土交通省の自動運転担当部署から説明を受けたことを本人Xで発信しました。
猪瀬直樹の「かばん」と5000万円問題とは?都知事を辞めた理由
猪瀬直樹氏について語られることの多い「かばん」は、東京都知事時代に発覚した徳洲会グループ側からの5000万円受領問題に関連する出来事です。
猪瀬氏は2012年の東京都知事選を前に徳洲会グループ側から5000万円を受け取りました。当初は選挙資金ではなく「個人的な借り入れ」という趣旨の説明をしていましたが、受領の経緯や保管方法、返却時期などをめぐり都議会で厳しい質疑が続きました。
- 2012年11月:都知事選を前に徳洲会グループ側から5000万円を受領
- 2013年9月:5000万円を返却
- 2013年11月:受領が表面化し、記者会見や都議会で説明
- 2013年12月:都議会で「かばん」を使った再現が行われる
- 2013年12月:東京都知事を辞任
- 2014年3月:公職選挙法違反で略式起訴され、罰金50万円の略式命令
なぜ「5000万円のかばん」が有名になったのか
2013年12月16日の東京都議会総務委員会で、猪瀬氏は5000万円を持ち帰る際に使ったと説明していたかばんを提出しました。
テレビ朝日の当時の報道によると、5000万円の札束に見立てた箱をかばんへ入れる再現が行われ、猪瀬氏自身も詰め込みましたが、ファスナーは閉まりませんでした。
あの映像は「本物の5000万円が入らなかった場面」ではなく、札束を想定した模型を使った都議会での再現です。「猪瀬直樹のかばん」として長く記憶されるきっかけになりました。
最終的に何の罪で処分されたのか
5000万円問題では、2014年3月に東京地検特捜部が猪瀬氏を公職選挙法違反(選挙運動費用収支報告書への不記載)で略式起訴し、東京簡裁は罰金50万円の略式命令を出しました。
「収賄罪で有罪になった」という経緯ではありません。 当時の報道では、5000万円が実際に選挙で使用された形跡はなかった一方、猪瀬氏は選挙に使う可能性があり、選挙資金としての側面があったことを認めています。経緯は2014年3月の処分報道でも確認できます。
「けじめをつけたいと考え、処罰を受け入れた」
出典:2014年3月28日の猪瀬直樹氏記者会見を伝えたSankeiBiz
都知事辞任はこの刑事処分より先の2013年12月です。5000万円をめぐる説明への疑問が収まらず、都政運営が困難になるなかで知事職を退きました。
猪瀬直樹の妻は蜷川有紀|前妻ゆり子と息子・娘について
猪瀬直樹氏の現在の妻は、女優・画家の蜷川有紀さんです。演出家・蜷川幸雄さんのめいでもあります。
2人は2016年に知人を介して知り合い、交際へ発展。2018年5月には共著『ここから始まる 人生100年時代の男と女』の出版とあわせて婚約を公表しました。デイリースポーツの報道では、2018年12月下旬に結婚し、双方にとって再婚だったとされています。
結婚後も公の場に一緒に出ることがあり、2024年には猪瀬氏が蜷川さんと舞台を観劇した様子を公式Xへ投稿しています。
前妻・ゆり子さんとは若い頃から47年間を共にした
猪瀬氏は1970年にゆり子さんと結婚しました。本人の略年譜では、猪瀬氏が大学を卒業した年に上京して結婚したことが記されています。
ゆり子さんは2013年5月、言葉のもつれをきっかけに受診し、悪性脳腫瘍と診断されました。同年7月、猪瀬氏が東京2020オリンピック・パラリンピック招致のため海外を行き来していた時期に亡くなっています。
「僕とゆり子は47年間、とてもよい、幸せな日々を過ごしました。」
出典:猪瀬直樹公式サイト「故 猪瀬ゆり子 葬儀告別式 御礼挨拶」
子供は長女と長男の誕生が公式年譜に記載
猪瀬直樹氏の公式略年譜には、1974年に長女、1978年に長男が誕生したことが記載されています。
一方、子供の勤務先や現在の詳細について、参議院や本人の公式プロフィールでは紹介されていません。「娘がNHKに勤務している」といった情報も見られますが、ここでは裏付けの取れる公表情報としては扱いません。
『昭和16年夏の敗戦』とは?猪瀬直樹の代表的な著書
政治家として知られる以前の猪瀬氏は、長くノンフィクション作家として活動してきました。なかでも現在まで読み継がれている作品の一つが『昭和16年夏の敗戦』です。
作品の中心となるのは、日米開戦前に設置された総力戦研究所です。若手の官僚や軍人、民間人らがデータを用いて日米戦争をシミュレーションし、「日本必敗」という結論に至りながら、現実の日本は開戦へ進んだ過程を追っています。
本人の年譜では、雑誌連載を経て1983年8月に単行本を刊行。現在流通する中央公論新社の新版には石破茂氏との対談も収録されています。
- 1983年に単行本化
- 2020年に中公文庫の新版が刊行
- 2025年にNHKで映像化
- 2026年7月31日、同書を原案とする映画『開戦前夜』が公開
映画『開戦前夜』では池松壮亮さん、仲野太賀さんらが出演し、2025年のNHK番組のドラマ部分に新たな場面を加えた劇場版として公開されました。
公開前日には、猪瀬氏自身も『昭和16年夏の敗戦』が原案であることを公式Xで告知しています。
『ミカドの肖像』『ペルソナ』『ピカレスク』も代表作
| 作品 | 内容・位置づけ |
|---|---|
| 『昭和16年夏の敗戦』 | 総力戦研究所と日米開戦までの意思決定を追ったノンフィクション |
| 『ミカドの肖像』 | 1987年に第18回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞 |
| 『ペルソナ 三島由紀夫伝』 | 三島由紀夫の人物と時代を描いた評伝 |
| 『ピカレスク 太宰治伝』 | 太宰治を扱った作家評伝 |
| 『日本国の研究』 | 日本の行政・特殊法人など制度の構造を取り上げた作品 |
| 『道路の権力』『道路の決着』 | 道路行政と道路公団民営化を扱った作品 |
1987年の『ミカドの肖像』では第18回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞しています。政治家になってから突然文章を書き始めた人物ではなく、作家・ジャーナリストとしての活動が政治や行政改革への関与より先にあります。
猪瀬直樹の学歴と若い頃|作家から道路公団民営化へ
猪瀬氏は1946年11月20日、長野県に生まれました。本人公式年譜によれば、3歳半のときに父親を亡くしています。
長野県立長野高校を経て、浪人中には医学部進学を目指して上京しましたが、受験後は信州大学人文学部へ進学。大学卒業後に再び東京へ出て、明治大学大学院政治経済学研究科で政治学を学びました。
学生時代は全共闘運動が広がった時期と重なります。1970年代後半から雑誌記事を本格的に書き始め、1980年代にノンフィクション作家として単行本を相次いで発表しました。
道路公団民営化で「作家」から政策の当事者へ
猪瀬氏の経歴で大きな転換点となったのが行政改革です。特殊法人を取材・批判する著作を発表した後、2002年、小泉純一郎首相から道路関係四公団民営化推進委員会の委員に任命されました。
ここでは外部から制度を論じる作家ではなく、民営化案を議論する委員として政策決定の過程に入りました。その経験は『道路の権力』『道路の決着』にもまとめられています。
道路公団民営化後の高速道路運用についても発信を続けており、2023年には、いわゆる道路上の規制ポールについて「民営化委員会終了後の運用」として自身の関与範囲を説明しています。
石原慎太郎都政の副知事から東京都知事へ
2007年6月、猪瀬氏は石原慎太郎知事のもとで東京都副知事に就任しました。それまで行政改革に外部委員として関わってきた猪瀬氏が、自治体行政の内部で仕事をする立場になった時期です。
石原氏が2012年に知事を辞職すると、その後継を決める東京都知事選へ立候補しました。東京都選挙管理委員会の公式結果では、猪瀬氏は無所属で4,338,936票を獲得して当選しています。
知事時代には東京2020招致を進めた
東京都知事として大きな仕事の一つになったのが、2020年オリンピック・パラリンピックの東京招致です。2013年9月に東京が開催都市へ選ばれた後、猪瀬氏は都庁の庁議で、招致を自分一人の成果とはせず次のように述べました。
「これは、チーム日本の力です。」
出典:東京都「知事の部屋」2013年9月11日
東京都の大会記録でも、開催都市決定時に猪瀬知事がJOC会長、IOC会長とともに開催都市契約を締結した経緯が記録されています。
その約3カ月後には5000万円問題を受けて辞職することになり、都知事在任期間は2012年12月から2013年12月まででした。
参議院で何をしている?現在の政策・国会質問
2022年に国政へ進んだ後の猪瀬氏は、特に医療・社会保障制度と現役世代の負担を国会で繰り返し取り上げています。
2026年3月17日の参議院予算委員会では、参議院事務局が猪瀬氏の主な質疑項目として次の3点を挙げています。
- 生産年齢人口の定義を実態に合わせて見直すこと
- 高齢者の医療費窓口負担と消費税減税の財源をめぐる問題
- 確定申告や年末調整を使った給付付き税額控除の早期実施
2026年4月には、本人のnoteで確定申告や源泉徴収を利用する「簡易版給付付き税額控除」を提案しました。制度を完成させてから開始するのではなく、簡易な仕組みを先行させるという考えです。
「これなら今年度からスタートできる。」
出典:猪瀬直樹公式note「秀吉の墨俣城を!」
- 社会保険料と医療費負担の見直し
- 高齢者医療における年齢だけでなく負担能力を考慮する仕組み
- 給付付き税額控除
- OTC類似薬など医療保険給付の見直し
- 国会・行政のデジタル化
- 自動運転を含む交通・モビリティ政策
ここで挙げた内容には、すでに成立した制度だけでなく、猪瀬氏が国会質問や意見表明で示している提案も含まれます。
医療扶助についても見直しを主張しており、2026年6月には本人Xで生活保護受給者の医療保険加入などについて自身の考えを発信しました。
参議院そのものの制度改革にも意見を出しています。2025年6月の参議院改革協議会での意見表明では、オンライン審議の拡大や、多様な職業との兼業を可能にする議会運営の見直しなどを提案しました。
猪瀬直樹の選挙区と当選回数|現在は比例代表
猪瀬氏は東京都知事を経験していますが、現在の参議院では「東京都選挙区」の議員ではありません。
2022年の第26回参議院議員通常選挙で、日本維新の会から比例代表に立候補して初当選しました。日本維新の会の選挙結果では、猪瀬氏の候補者名得票は44,211票とされています。
| 選挙 | 立場 | 結果 |
|---|---|---|
| 2012年東京都知事選 | 無所属・新人 | 4,338,936票で当選 |
| 2022年参議院議員選挙 | 日本維新の会・比例代表 | 44,211票で初当選 |
2022年参院選の結果は日本維新の会の参院選結果でも公表されています。参議院の公式情報では、現在の任期は2028年7月25日までです。
猪瀬直樹は「作家・行政改革・都政・国政」をまたいできた人物
猪瀬氏の経歴は、選挙で議員になってから政治を始めた一般的な政治家とは少し異なります。ノンフィクション作家として行政組織を取材し、道路公団民営化では政策形成の当事者となり、石原都政の副知事、東京都知事を経て参議院議員になりました。
都知事時代には東京2020招致に携わる一方、徳洲会側からの5000万円をめぐる問題で辞任し、その後、公職選挙法違反で罰金刑を受けています。政治の表舞台を離れた時期には大阪府・大阪市特別顧問を務め、2022年に国政へ戻りました。
2026年には『昭和16年夏の敗戦』を原案とする映画『開戦前夜』が公開され、79歳の現在も「作家」と「参議院議員」の双方で活動しています。

